JIA港地域会日本建築家協会 関東甲信越支部 港地域会

JIA港地域会 活動報告

第38回 車から人へ、未来の道とは

第38回 MASセミナー
日時
2024年7月20日(土)
14:00~
場所
日本建築家協会 JIA館1F建築家クラブ
パネリスト
宮田多津夫大倉冨美雄田口知子村上晶子武田有左今井均連健夫
司会・進行
湯本長伯

パリを筆頭に、「ウォーカブル・シティ」と呼ばれる徒歩15分圏内の街づくりに関心が高い。移動手段が公共交通と徒歩に変わり、バルセロナでは30年間で車が減り道路面積70%を人に開放した。街路に緑と安全な場が存在する。車社会がもたらす弊害は、地球には気候変動、人には運動不足と健康被害をもたらしたが、それを解決する街づくりである。「車から人へ、未来の道とは」をテーマとし、未来の道はどうあるべきか、考えてみよう。(宮田多津夫

宮田 多津夫 路面と段差
宮田多津夫

「ウォーカブルな街」吉祥寺を歩いた。表通りから一歩裏道に入ると歩いて楽しい安全な街路が広がる。道幅いっぱいに段差なく歩けるのがいい。舗装仕上げを変え「歩行者優先ですよ」という安全サインを出す。そのおかげで人を待ちながら車はノロノロと動く。タータンチェックのパターンのように、車と人をすみ分けた道をつくる時代なのではないか。「行政のハードル(段差)は高い」が建築家に相談すれば未来が開けてくる。

大倉 冨美雄人社会の未来
大倉冨美雄

身近な想定だけでのサーキュラーを作ってみたが、百年経っても、人は動きたいので車は無くならないし、もっと変質しているだろう。超小型になったり、ドローン状に空中を移動するのが当然かも。自転車、スケーター、キックボードなどは使い尽くされて、ボディ部品のようになっている可能性もある。想定では、道路や駐車場はこれらの状況に左右されてゆく。図は当面の機能から、これは動かないだろうという見方である

我々の職能感からすると、どういう所に人が集まるか、どうすると逃げ出し、陰気な空間感なるか、判っている。だから物流効果からの道路計画のようなものがもたらす道の結果を想定できる。でもこういう主張はこれまでほとんど通らない。感性価値への評価が無いからだ(参考写真は環状4号線で消える場所の例。運動は無駄に。かって清水が流れ、水車があった)。

余談だが、家康が天下を取って、道路を整備しない政策を実行して約400年。馬車を使わせなかった江戸時代を意識して、庶民が200年以上も我慢してきたことを考えてみよう。この国の民の心底が読めてくる。人社会のこれからの200年を考えてみるのも意味がある。

もっとも200年と言うだけで、気候変動で人類が破滅しているかもしれないけれど。

田口知子人に優しい街をつくる方法
田口知子

今回は道がテーマです。魅力的なまちについて考えるとき、歩いて楽しい街、という言葉が浮かびます。一方で麻布台ヒルズやイオンモールのような大規模商業施設は、歩いて楽しい街かもしれないのですが何かが違う。麻布台ヒルズは、外部空間が多く内部にもまち歩きができるような変化と工夫があり、楽しい街ですが、高級ブティックは閉ざされた印象、そこに暮らす人の営みや時間というものが存在しません。まちの魅力とは何でしょう?小さな事例として今回ピックアップしたのは、池袋の「ニシイケバレイ」。地主の実家の古い木造家屋を改修し、1階部分をカフェにしたり、隣接するアパートの1階にはショップを入れたり、居酒屋にリノベーションしたりして、建物はそのままに、道と敷地の塀を取り払い、緑とパーゴラを設置。不思議に和む、心惹かれる風景が生まれています。古い建物を改修することで、そこに時間の記憶もデザインされる。建物の機能を開くことで、街並みの風景が人に優しい豊かな風景を提供してくれる、そういうまちづくりに魅力を感じます。若い建築家や企画・不動産の人たちが地主とタッグを組んでプロジェクトを実現していることに、未来の希望を感じます。

村上晶子鎌倉の通学路 ―段葛―
村上晶子

街と道の未来を考える題目で少し視点を変えてみます。鎌倉鶴が丘八幡宮への参道となる段葛についてです。私事ですが小・中学校が八幡宮の横でしたので、この道を9年間通いました。最初は源頼朝が北条政子の安産祈願で作ったものです。海と山の地勢を生かした見事な都市計画です。八幡宮から海へ抜ける軸線上には一鳥居、弐鳥居、参鳥居と並びたち、次第にサイズが変化するパースペクティブな構成です。この参道に入るときは4人並べる幅が八幡宮入り口では2人位に絞られて実際より長く奥行きを感じられます。当初は周辺の水はけが悪く参道だけ高くした経緯があるそうですが、現代では両脇の車道から45センチほど高いことと桜並木の連なりで、車より視線が高いことで快適に安全に通ることができます。通学路としても安心でした。車道の外には歩道もあり昔ながらの店構えも残っています。さらにその裏道には有名な小町通りがあり人がひしめいています。行きは参道、帰りはお買い物というのが定番になっている。車の道を2つ挟み、段葛を挟むことによってその裏の住宅街は落ち着いていられる。このようなメリハリあるつくりです。道を広場的な感覚でみる考えではなく粗密感のある帯として捉えても面白いのではないかと思いお話ししました。

武田有左プラチナ通りに見る未来の道
武田有左

今回の御題を「車から人へ」と言った美辞麗句的な単純な捉え方では、本当の意味で、これからの社会像を見いだすことは出来ない。猛暑の中、ギャラリーの皆さんが徒歩で会場に集散されたにも拘わらず、セミナー登壇者の多くが、そして御題を掲げたメンバー自身が、車で会場に駆けつけた現実を顧みる必要がある・・・

これからの社会を考える時には白か黒かではなく、常に重ね合わせ的な思考が必要になって来ると考える。人が歩いて心地よく、そして車で走っても楽しい道・・・そんな道を都内の要所要所に織り交ぜながら都市計画を進める事を提案する。徒歩圏の人々は歩いてやってくれば良いし、離れた場所からは車で来て、ちょいと停められる・・・

事例は港区に存在する、白金台を走るプラチナ通りである。2019年〜2020年に事業認可され、現在、工事が進む環状第4号線事業であるが、此のまま事業が進められれば、車優先の単なる通過導線としての道路になって仕舞うだろう。

ここは未来の社会に向けて、一度立ち止まって考えて見たら良いと私は考える。

今井均人・車・周辺環境のバランスに目を向けたい
今井均

道路とその周辺の公共施設のあり方はその国の豊かさを感じさせるものがあります。

建築もまた道路に接するものとしてその一翼を担うものですが、現代の日本ではどうもそれらが一体として見た時、好ましい関係があまり見当たりません。ヨーロッパの街並みの形成として好ましいと思うものはその地域の時間の変化の中で生き残ってきた建築や広場が現代の街を構成する核となっているように僕は感じています。そのことは古い建築や公共の広場を残すというよりは時代の変遷の中で生き抜いてきた構築物や町並みなどから発せられる力量が市民のリスペクトを通じて現実の中で生かされている様に思えます。そのことの源泉には、建築は勿論、土木工作物などにも美という基本的なものが存在し、それらが地域住民共通のプライドとして根付いている様に思います。現代の日本のスクラップアンドビルドの手法は都市に時間的な厚みを感じさせる要素があまりに希薄だと思わざるを得ません。現在の商業的な手法が蔓延する中で、なお日本の都市部の建築において何ができるのかとも思いますが、僕としては自身に関わる仕事にこだわり、現実的に作って行くしか無いのかと思います。そして、例え小規模な事例だとしても関心を寄せてくれることを期待し、そういったことの姿勢が街の規範と成ってゆく事ことを祈りたいと思います。

連健夫住民と一緒に街を考える
連健夫

街の未来の道を市民と一緒に考えることもできます。市民とはそこに関わる人で住民や働いている人、訪問する人、行政の方も含まれ、その実施事例のお話をします。私が港区まちづくりコンサルタントとして関わっている「赤坂通りまちづくり協議会」でタカラとアラの街歩きワークショップをしました。タカラとは良い点、アラとは課題や問題点です。それを歩きながら考えるワークショップです。その中で道路のガードレールはタカラかアラか?が議論になりました。元町に見学に行きました。そこでは車のための道路ではなく人のための道の整備を行っていて、ガードレールではなくボラードを使っていました。これは歩道と車の走る部分が認識はできるが、両側のお店から人の行き来ができるようなもので、花飾りのものや照明を内装しているものもありました。皆で話し合いをして赤坂の街の未来の道を提案しました。この実現には、さまざまな立場の人がいるので話し合いが大切で、それをうまく進めるためにファシリテーター(調停者・推進者)が求められます。それは専門家だけではなく、誰でも担うことができます。ご興味のある方は、https://jcaabe.org/page-12/page-2143/を観て頂くと嬉しいです。

湯本 長伯車から人へ、未来の道とは
湯本長伯

世の中のこと、何でも視点を代えてみることは大事です。

女性の視点からというと限られているようですが、多様性の中に個々の立場や考えが埋没するのは、誰もが尊重されることとは違います。

一人一人が違いを尊重されることをどう実現するのか、かなり深い考察が要るようです。

多様性尊重とは、先ずは違いを認め違っていることを前提にし、その違いは様々な恩恵をもたらしてくれる貴重なものだ、そう認識を改めることが継続的に重要だと思います。面倒なことではなく有難いこと、それが難しいのですが!

当日の模様

MAS第38回の模様1 MAS第38回の模様2 MAS第38回の模様3 MAS第38回の模様4

アンケート

ご参加された皆様、アンケートへご協力いただき誠にありがとうございました。
ご協力いただいた方の中から一部をご紹介させていただきます。

第38回アンケート1
セミナーに参加されるにあたって、どんなことを期待されて来られましたか?
人と車の関係に興味を持ちました!
今日の内容を聞いて、共感したこと、興味をもったことをご記入ください。
無回答
その他、今回のセミナーで感じられたことをご自由にご記入ください。
知らなかった事が多く良かったです。
今後のセミナーで取り上げて欲しいテーマがありましたらご記入ください。
無回答
今後のセミナーの参加について、以下のどれかをお選びください。
また参加したい
第38回アンケート2
セミナーに参加されるにあたって、どんなことを期待されて来られましたか?
久しぶりに今井さんに会う。
今日の内容を聞いて、共感したこと、興味をもったことをご記入ください。
・クルマの環境、道路も大事だが、クルマのEV化には疑問がある。
・高い、重い、処方しにくい。日本の小さいガソリ車で充分のよう。
その他、今回のセミナーで感じられたことをご自由にご記入ください。
・古い町はいいなあ。
・トラムって東京に欲しい。
今後のセミナーで取り上げて欲しいテーマがありましたらご記入ください。
坂道と階段。
麻布、落合(坂道の町です)
今後のセミナーの参加について、以下のどれかをお選びください。
また参加したい
第38回アンケート3
セミナーに参加されるにあたって、どんなことを期待されて来られましたか?
建築家の新しい意見をききたいと。
今日の内容を聞いて、共感したこと、興味をもったことをご記入ください。
街に人がないなくなっている。
街道人。またまだ課題多いかな。
その他、今回のセミナーで感じられたことをご自由にご記入ください。
聞きやすい、話しやすい雰囲気。
今後のセミナーで取り上げて欲しいテーマがありましたらご記入ください。
建物と街とこども 教育
今後のセミナーの参加について、以下のどれかをお選びください。
また参加したい
第38回アンケート4
セミナーに参加されるにあたって、どんなことを期待されて来られましたか?
無回答
今日の内容を聞いて、共感したこと、興味をもったことをご記入ください。
ウォーカビリティと車が必要な方との共存
その他、今回のセミナーで感じられたことをご自由にご記入ください。
色々な視点であり、もう少しテーマを統一した方が判りやすいかもしれない
今後のセミナーで取り上げて欲しいテーマがありましたらご記入ください。
無回答
今後のセミナーの参加について、以下のどれかをお選びください。
また参加したい
第38回アンケート5
セミナーに参加されるにあたって、どんなことを期待されて来られましたか?
無回答
今日の内容を聞いて、共感したこと、興味をもったことをご記入ください。
無回答
その他、今回のセミナーで感じられたことをご自由にご記入ください。
無回答
今後のセミナーで取り上げて欲しいテーマがありましたらご記入ください。
都市開発について
今後のセミナーの参加について、以下のどれかをお選びください。
また参加したい
第38回アンケート6
セミナーに参加されるにあたって、どんなことを期待されて来られましたか?
知らない知識など、知っておいた方がよいなと思いました
今日の内容を聞いて、共感したこと、興味をもったことをご記入ください。
車と人との共存。これからの時代、高節化に向けての課題。
その他、今回のセミナーで感じられたことをご自由にご記入ください。
色々な視点でのお話が聞けておもしろかったです
今後のセミナーで取り上げて欲しいテーマがありましたらご記入ください。
無回答
今後のセミナーの参加について、以下のどれかをお選びください。
また参加したい
第38回アンケート7
セミナーに参加されるにあたって、どんなことを期待されて来られましたか?
様々な考え方を持っている先生方の異なる視点の意見が聞ける
今日の内容を聞いて、共感したこと、興味をもったことをご記入ください。
まず出来るところから
その他、今回のセミナーで感じられたことをご自由にご記入ください。
今日人数が多く色々な意見が聞けて良かった
今後のセミナーで取り上げて欲しいテーマがありましたらご記入ください。
無回答
今後のセミナーの参加について、以下のどれかをお選びください。
また参加したい
第38回アンケート8
セミナーに参加されるにあたって、どんなことを期待されて来られましたか?
車と人。車と都市を時代の流れを基準とした発展、今後のあり方
今日の内容を聞いて、共感したこと、興味をもったことをご記入ください。
車と人。ウォーカビリティの在り方について
その他、今回のセミナーで感じられたことをご自由にご記入ください。
無回答
今後のセミナーで取り上げて欲しいテーマがありましたらご記入ください。
無回答
今後のセミナーの参加について、以下のどれかをお選びください。
また参加したい
第38回アンケート9
セミナーに参加されるにあたって、どんなことを期待されて来られましたか?
新しい感性、これまで大事になされていること
今日の内容を聞いて、共感したこと、興味をもったことをご記入ください。
車と人を区分けするための工夫もよし、段差、視点
その他、今回のセミナーで感じられたことをご自由にご記入ください。
できることを1つ1つ実現していく。暮らしている中で、大きなことは何なのか、考えることを、講師の方やお客様の様々な考えから得られました。
今後のセミナーで取り上げて欲しいテーマがありましたらご記入ください。
無回答
今後のセミナーの参加について、以下のどれかをお選びください。
また参加したい
第38回アンケート10
セミナーに参加されるにあたって、どんなことを期待されて来られましたか?
様々な見方、意見を伺えること。
今日の内容を聞いて、共感したこと、興味をもったことをご記入ください。
無回答
その他、今回のセミナーで感じられたことをご自由にご記入ください。
街をつくる人と街に住む人の距離がある。
今後のセミナーで取り上げて欲しいテーマがありましたらご記入ください。
無回答
今後のセミナーの参加について、以下のどれかをお選びください。
また参加したい
第38回アンケート11
セミナーに参加されるにあたって、どんなことを期待されて来られましたか?
15分minits city構想のように、日本の事例収集等を期待しておりました。
今日の内容を聞いて、共感したこと、興味をもったことをご記入ください。
お互いのリスペクト、交り合うことも必要ということ。
先週のあり方、建築でできること、改めて考えさせられました。
タータンチェックわかりやすかったです。
その他、今回のセミナーで感じられたことをご自由にご記入ください。
ディスカッションすることで考え方がクリアになった気がします。
今後のセミナーで取り上げて欲しいテーマがありましたらご記入ください。
無回答
今後のセミナーの参加について、以下のどれかをお選びください。
また参加したい

関連資料(PDF)

  • A4版(セミナー概要)
  • A3版(当日講演するテーマについて建築家からのメッセージ)

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